姉とアイスと下克上続編
姉ちゃんが武術の大会に出た。
体格差も体重の差も物ともせずに、リアルに「動物園から逃げて来たんじゃないか」っていうような巨漢ですら、あの姉はアッサリと薙ぎ倒して勝ち進む。
そして、やはりと言うべきか優勝して、今は全国大会に出る為に飛行機で旅立っている。
俺はその期間に思いっきり羽を伸ばせて満足。いつもパシられて走るコンビニでゆっくり買い物が出来る。
忍足さんは「今日は姉ちゃんと一緒やないんやなぁ」とコンビニで俺に会う度に溜息を吐く。この人はあの怪力ゴリラのどこがいいんだろうか。
そして必ず姉ちゃんのメールアドレスを教えろと俺にグイグイ迫ってくる。
先輩じゃなかったら携帯を逆に折り畳んでやりたいくらいにウザい。
それを軽くあしらってコンビニを出る。と同時に携帯が鳴った。姉ちゃんだ。
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だから何だって言うんだ。
意味が分からない。「食べたい」とでも俺が言うと思ったのかあの馬鹿。傍にいても離れていてもやる事は変わらないな。
そんなもん忍足さんに送っておけばいいのに、あ、メールアドレス教えてないから無理か。とりあえず「不幸になれ」とだけ返信して足早に家に帰った。
「あ、おかえり若ー」
玄関を開けると、リビングからひょっこりと顔を出す姉がいた。なんだ、今日帰って来るんだったのか。
「どこ行ってたの?」
「何でお前に教えなきゃならないんだ」
「超可愛いくない」
「フン」
いつものソファに腰掛けると、当たり前のように横に座る姉ちゃん。チラリと目線をやると、どこも怪我はしていないようだった。
「折角若にお土産買って来たのに」
「別に頼んでない」
「あー可愛いくない!お母さーん!若可愛いくないー!」
バタバタとキッチンに滑り込んでいった姉。本当に喧しい。あと1ヶ月くらい帰って来なくて良かったのに。
「お母さんがそれでもあげなさいって言うからあげる」
「なんだそれ」
「有難く思いなさいよ」
姉が俺にズイ、と押し付けてきたのは、さっきの写真で見たぬれ煎餅だった。
「…」
「若が好きだから買って来た」
「…フン」
コンビニで買ったアイスが要らなくなったので、姉にくれてやった。
食べ過ぎて夜ご飯が入らなくなったら母さんに怒られるし。
「美味しい?」
「まぁまぁだ」
「へーえ」
「ニヤニヤするな、気色悪い」
喜ぶ君が
年相応で可愛いから、という姉ちゃんの台詞は無視。
END.
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