「あー暑い。若暑い」
「ならくっつくなよ」
「若は冷たい。喰らえ鉄拳」
「やめろよ姉ちゃん」
姉とアイスと下克上
俺には二つ年上の姉ちゃんがいる。こいつがまたくせ者で、昔から俺を子分みたいに引き連れるのが好きなお転婆な奴だ。
おまけに古武術も無駄に極めてて、逆らうものなら俺の顔面に裏拳が飛んで来るのだから堪ったもんじゃない。
「若、最近部活はどう?」
「何だよ急に…」
「あの泣きボクロの人見てて楽しいじゃん」
だから今、ソファに座る俺にしな垂れかかる姉ちゃんを無理に引き離せずにいた。本気で殴られたら堪ったもんじゃない。
「あー若、アイス食べたい」
「そうかよ」
「買って来て。私パキッて二個に割れるのがいいなー」
「自分で買って来いよ」
ぐだぐだと俺に纏わり付く姉ちゃんを一瞥する。前に忍足先輩が姉ちゃんを見て「美人やな」と言っていたが、俺から言わせればただの怪力ゴリラだ。
「おっけー分かった若、ジャンケンして負けた方がアイス買ってくる事にしよう」
「俺別にアイスなんて食べたくないし。だから俺は勝っても負けても意味無い…」
「パーはビンタでチョキは目潰し、グーは鳩尾パンチの問答無用ファイトジャンケーン!さーいしょーは…」
「分かったよ買ってくればいいんだろ買ってくれば」
これだから嫌なんだ。
俺はコンビニの入り過ぎた冷房に身を震わせながらレジに並んで、そこで忍足先輩に姉ちゃんを熨斗袋付きで送り飛ばす方法をずっと考えていた。答えなんて出なかったけど。
「ほら」
「うわーソーダ味とか若分かってんじゃん!若大好き!」
「ふん」
ソファに座りながらアイスを食べる姉ちゃんの横に並ぶ。二つに割れるタイプのを割らないで食べている辺り、やっぱコイツはゴリラなんじゃなかろうか。
「あれ、若もアイス買ったの」
「悪いかよ」
「あー!しかもそれクリスピーの高いヤツじゃん!交換しよ!」
「もう半分食べておいて何言ってんだよ。嫌だね」
結局俺は自分のアイスを姉ちゃんに奪われて、半分になったソーダ味のアイスを空しく食べるハメになるのだった。甘ったるいから好きじゃないのに。
「くそ、下克上だ」
「何かいった若?」
END.
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生意気ですよね、日吉。
ウザカワイイって彼の為の言葉だと思う。
跡部はホクロカワイイ。