- ナノ -


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 いつからだろう。外を駆けまわる人の子らの声が聞こえなくなったのは。それだけではない。鳥や、虫や、他の動物。その声も、ふと気がつけばあまりにも聞こえてこない。竜が翼を羽ばたかせる、その音だけが、やけに大きく空に響く。
 灼熱の日差しが竜の背をじりじりと焼いている。死のような熱風が吹き、地表の砂を散らしていった。


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