- ナノ -


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 もしも俺が死んだら。言づてを親しい人に託し、病気でこの世界から旅立っていった竜がいた。彼の遺体は言づてどおり、人間たちがつくった博物館に運ばれ、竜の体や骨格などの調査がなされた。そうして、竜の体や竜医学に関する研究が進んだ。
 体が自然の中に溶けて消える、その前に。にっと笑ってそう言った竜のことを、生涯、竜の友は忘れなかった。


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