- ナノ -


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 人間は目の前に広がる巨大な穴を見て呆然としていた。これ、ほんとに竜の足跡なの、と思わず声を漏らす。竜にも様々な大きさの者がいるからな。人間の隣にいる竜は平然と言った。
 この足跡の面積に人の住む家を建てれば、二、三軒は建つかもしれない。こんな大きな竜、どこにいるんだ、と半ば呆れながら人間が呟く。人の知らない場所はたくさんあるということだ、と竜は澄ましてこたえた。


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