- ナノ -


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 海を見渡すことのできる庭で、彼は白い特製の椅子に座っていた。彼の脚は、もう動くことがない。竜から落ちて自由を失ったのだ。竜に乗ったことを後悔しているか、と竜は彼に問うた。彼は穏やかな瞳で首を振る。僕は君たちと空を飛べて幸せだったよ。
 落竜して命は助かったものの、深刻な怪我を負い、自棄になる者は多い。中には竜を恨み、殺した者もいるという。彼が本当のところ、どう思っているかはわからない。だが竜は、彼の言葉を信じたいと思った。


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