- ナノ -


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 鎧に足を掛ける女性へ、少女は問いかける。お母さん、ほんとうに大丈夫? 女性はへいきへいきと不敵に笑う。こう見えても若いころは毎日竜乗りしたものよ。そう言ってひょいと竜に跨る動作は、確かにこなれている。
 少し離れた街へ出掛けた少女の父が、昼食を家に忘れていった。それを届けようというのである。女性は大張り切りのいきいき顔だ。それでもちょっぴり不安そうな少女は、お母さんをお願いね、と竜にこっそり耳打ちした。


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