- ナノ -


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 いつのまにかあたたかさを帯びた風が、吹き抜けてゆく。その度に、人の子の髪と、鬣をもつ龍の子の毛が大きく揺れた。大変そうだが、人の子も龍の子も声を上げながらどこかたのしそうにしている。こういうときに春風をより感じられるのは彼らの方かもしれない。毛を持たない竜は、人の子と龍の子を見ながらそう思った。


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