- ナノ -


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 俺はさ、ほんとは竜に乗るのが苦手なんだ。仕事柄、乗らざるを得なかったから乗ってただけで。隣町への積荷を竜の背中に結えながら、男はそう語った。だが、いざ、明日から竜乗りしなくてよくなると思うと……なんでかな、寂しいよ。
 彼は今日を限りでこの仕事を辞めて郷里に戻る。竜と飛ぶ最後の空は、初夏のきらめきを帯び始めていた。


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