- ナノ -


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 竜の背中に、翼のない小さな竜が登っていった。このまま飛べば振り落としてしまうかもしれない。降りるように声をかけたが、小竜は動かなかった。それどころか、どうもその両手足でますますしっかり竜の背に捕まっているようである。竜はぴんときた。そっと羽ばたき、低空飛行する。しばらく飛んだところで着地すると、小竜はうれしそうに降りてきた。どうやら空を飛んでみたかったらしい。竜の前でぺこりとおじぎすると、草むらの向こうに姿を消した。


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