- ナノ -
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その竜は、春になるとやってきた。薄桃色で、光に透けるような鱗。ほっそりとした体躯。半透明の翼。まるで桜のようだと、人々は言った。しかし、ある時を境に竜を街で見ることはなくなった。その街は、かつて、とりどりの桜が咲き乱れることで有名だった。今は桜の代わりに、物を作るための工場が建ち並んでいる。
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