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- ナノ -


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 もし、もういちど飛べるなら、どこへ行きたい? 草木に埋もれるようにひっそりと身体を横たえる竜へ、その人間は尋ねた。やや間があり、竜はゆっくりと言った。ずっと、飛んでいたい。どこへともなく。力尽き果てる、そのときまで。空を、旅するんだね。人間はそう言って、ほほえんだ。


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