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- ナノ -


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 うまい、と、竜は目を見開いた。これはなんだ、人間は毎日、こんなうまいものを食べているのか? そんな竜を前に青年はからからと笑う。これはケーキ、特別な日に食うやつだ。今日は俺の誕生日、そんでもってそいつはそのおすそわけってわけ。そういや竜って、ふだん何食ってんだ? 突然の問いに、竜は思わず言いよどむ。わたしか? わたしは……、その目がすいっ、と、青年の持つ残りのケーキの方に泳いだ。そして言った。……ケーキ。しばしの沈黙のあと、青年は盛大に吹き出した。なごり惜しそうにケーキを見つめる竜を尻目に、うっそだあ、うっそだあ、といつまでも笑っていた。


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