- ナノ -


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 眼下に青く輝く海を見て、海の上は歩くことができる、と竜が言った理由が彼女にはようやくわかった。今、そこに広がっているのは、固く凍てついた氷の海。白い息を吐きながら慎重にその上に降り立つと、竜は彼女を背に乗せたままゆっくり歩いた。海はびくともせずに、その数歩を支えている。彼女は寒さも忘れてその不思議さに見入っていた。


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