- ナノ -


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 これをこうして削ってね、はいできた。彼が手のひらに収まるくらいの木材を削って作ったのは、小さな竜の人形。わあ、と子どもたちから歓声が上がる。順番に作ってあげるからね、と彼は微笑んだ。
 とある国で、彼はその彫刻の腕を認められ名声を得た。しかしそのことは彼を必ずしも幸福にしなかった。考えた末、彼は仲良しの竜に乗せてもらい、人知れず旅立った。以来こうして、行く先々で子どものために木を彫りながら、穏やかな時をすごしている。


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