- ナノ -


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 明日、ひときわ重要な仕事が待っているという彼は落ち着かないようだった。竜が言う。息を忘れてないか。こんなときこそ、集中して深く息をするのだ。
 彼が顔を上げると、竜は自ら深呼吸をしてみせた。大きな腹がぷくっと膨らんで、ぺこっとへこむ。その様子に思わず笑いだす彼。なんかちょっと楽になったよ、ありがとうと涙を拭う。納得がいかない表情を浮かべつつ、楽になったのならよかったが、と竜は呟いた。


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