- ナノ -


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 彼の目は遥か遠く、空の彼方、海の向こうを見ていた。誰にともなく彼は呟く。今でも待っているんだよ。君たちが戻ってきてくれる日を。もしみんな忘れてしまったとしても、僕は覚えているよ、と。
 冷たい風の中で、海は、切なく波音を響かせている。竜たちを送り出した、その日のように。


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