- ナノ -


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 竜の視線をずっと感じる。人間の手には木で拵えた深皿。熱々のスープが入っている。竜と皿を交互に見て、食べてみる? と人間は尋ねた。竜はごくりと喉を鳴らして頷いた。
 幅広で縁のある皿にスープを入れて竜の前に置く。竜は徐ろに口をつけ、その途端、びくんと震えた。竜も猫舌だったか。人間はふふと笑った。


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