- ナノ -
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紅葉みたいに赤くて小さな竜でね、と彼は傍の竜に微笑んだ。秋が来るとその竜のことを思い出すんだ。
小竜は、色づいた木々の葉の間や、地面に落ちた葉が厚く重なっているところからよく顔をのぞかせていた。しかし、街を大きくするためこのあたりの樹が減らされた頃からだったか。いつのまにか姿を見なくなったという。
どこかで元気にしているさ。竜はそう言い、旅の途中でその小竜に会ったら彼に知らせると約束した。
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