- ナノ -
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鴉天狗がため息をつく。調子に乗ることを人は天狗になると言うが、天狗になってしまったのは人自身なのではないだろうか。
竜は何も答えない。再びため息をつく鴉天狗。人間に肩入れするのは自由だが、多くの命が奪われたり、逃げねばならなくなったりしたことは、ゆめゆめ忘れてくれるなよ。言い置いて、鴉天狗は夕暮れの空に消えた。夢のように。
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