ようやく覚えたボーゲンでなんとか麓のレストハウスまで辿り着き私は一息ついた。

尾形さんはそんな私の目の前で、雪をけたてて鮮やかに止まった。
ゴーグルが粉雪まみれになって、何も見えない。

「ははッ、まるで雪だるまみたいだな」

尾形さんの笑い声が聞こえる。
私はゴーグルをはずしながら、身体についた雪を払い落とした。

「そ、そんなに太りましたか?」

「いや、むしろもっと肉を食え。もう少しむちむちしているほうが抱き心地がいい」

「尾形さんのスケベ!」

「男は皆こんなもんだぜ」

そんなことはない…はずだ。たぶん。
でも、白石さんなら尾形さんの意見に同意しそうな気もする。
谷垣さんならどうだろう?

「谷垣さんは紳士ですよ」

「あれはムッツリだ。俺にはわかる」

「杉元さんだって、きっとそんなこと言わないです」

「俺の前であいつの話はするな」

途端に鋭い目付きになる尾形さん。
相変わらずだなあ。
因縁の仲なのは、いまも変わらないらしい。

「それより次は上級者コースに行くぞ」

「ええっ!?さすがにまだ無理ですよ」

「しょうがねえ…なら、もうひと滑りしてから戻るか」

あっさり引いてくれたことにほっとしながら私は尾形さんと一緒にリフト乗り場に向かった。


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