「みんな…大丈夫かな…」

なまえは外のほうを見て心配そうに呟いた。
密室であるこの部屋から外は見えない。

だが、先ほどから明らかに戦いが始まったと思われる音が響いているのと、リボーンが厳しい表情でそれに聞き入っていることから、状況は決してよくないのだということだけは分かった。

「──!?」

突然、外からの音が止んだ。
瞬く間に壁が切り裂かれる。

「あっ…!」

「下がってろ」

驚くなまえをリボーンが自分の後ろに押しやって庇う。
彼らの前に、切り裂かれた壁の向こうから一人の男が現れた。

「初めまして、なまえさん。私は運び屋の赤屍蔵人と申します。貴女をお迎えに上がりました」

「……ダメだ……行くな……」

ツナの弱々しい声がなまえを引き留める。

「ツナ!みんな…!」

壊れた壁の向こうに見えた光景になまえは悲痛な声をあげた。
外はまさしく戦場のような有り様になっていたのだ。
綱吉だけではなく、全員が傷を負って倒れている。
リボーンが殺気を帯びながら赤屍に銃口を向けた。

「…てめえが一人でやったのか」

「ええ。なかなか楽しませて頂きましたよ」

赤屍が薄く笑って答える。
あれだけの人間を相手に戦ったというのに、彼はまったくの無傷だった。

「さあ、姫君」

赤屍がなまえに手を差しのべる。

「…私が一緒に行けば、みんなは助けてくれますか?」

「勿論です。私の仕事は貴女を運ぶことですからね」

「待ちやがれ…!」

なまえ姫が赤屍の手を取ろうとした瞬間、突然背後から放たれた炎が二人の間に割って入った。
赤屍が背後を振り返る。

「…ドカスが」

ザンザスが立っていた。
よろめきながらも確固とした意思を感じさせる足取りで歩いてきた彼は、グイとなまえを自分の胸に抱え込むように抱きしめた。

「誰が行っていいと言った」

「ザ…ザンザス…」

「行くな」

苦しいくらいにきつく抱きしめられて、なまえの瞳に涙が滲む。
こんなにも想われていたということ、そしてザンザスやみんなを自分の我が侭のせいで傷つけてしまったという後悔で、なまえの胸は張り裂けんばかりに痛んだ。



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