好きな人の好きなものを知りたいと思うのは、恋する男の当然の欲求である。 京子がとあるアーティストの曲が好きだという情報を入手した綱吉は、早速双子の姉のなまえの部屋を訪れた。 なまえは京子の友人なので、もしかしたら…と思ったのだ。 「うん、あのCDなら私も持ってるけど、貸してあげようか?」 案の定、なまえはにこにこしながらそう答えた。 「そこの棚にあるから持って行っていいよ。好きな時に返してくれればいいから」 異性の姉妹がいるとこんな時便利だ。 綱吉は姉の有り難みを噛み締めながらCDラックを探った。 「あれ?これなんのCD?」 クリアケースに入ったCDを掲げて綱吉が尋ねる。 見た感じタイトルらしきものは見当たらない。 「たぶん、スクアーロの誕生日にあげた曲のオリジナルだと思う。渡したほうはMDにして渡したんだけど、編集するのにCDのほうが簡単だったから」 「スクアーロに?」 初耳だ。 いくら同じボンゴレファミリーとはいえ、リングを取り合った暗殺部隊のメンバーの誕生日まで祝っていたのか。 綱吉は驚くと同時に興味を持った。 「これも借りていっていい?」 「うん、いいよ」 なまえの快諾を受けて、綱吉は目当てのCDとともにそれを自室へと持ち帰った。 まずはスクアーロへの誕生日プレゼントだったというCDをコンポに繋ぎ、聴いてみる事にする。 「一体、どんなんd」 『ドカスがぁぁぁあああ!!』 突然流れ出た絶叫とともに、鼓膜がビリビリと振動した。ついでに脳みそも揺れた気がする。 「んなぁっ!?」 『このカス・カス・カカカカカカス・カス・カスカスカス・どカスがぁぁーー!』 激しいリズムに乗ってDJ風に編集されたシャウトが続く。 その声は紛れもなくザンザスのものだった。 カスカス連呼する声を呆然と聴いていた綱吉は、ハッと我に返ると慌てて曲の再生を止め、なまえの部屋へと駆け込んだ。 「な、な、なんだよ、あれーー!?」 「え、だから、スクアーロの誕生日プレゼント」 「ザンザスじゃん!ただザンザスの怒鳴り声を編集してパンクロックに被せただけじゃん!」 「でも、凄く喜んでたよ。心のこもった長いお礼の手紙も届いたし」 「はあぁ!?」 いつも本人に怒鳴られているのに、音楽でまで罵声を聞きたいとでもいうのか。 綱吉には信じられない世界だ。 「お仕事の前に、精神集中する時に聞いたりしてるんだって」 「………………そ、そうなんだ…」 よろめきながら部屋に戻る。 その後で聴いた京子が好きだという曲は、癒し系の優しい感じの曲だった。 すごく癒された。 |