鍵を開ける音。 ドアを開いて入って来たザンザスの気配に、俯いていた少女が顔を上げる。 「よく眠れたか?」 「ツナは…?ツナに会わせて」 ザンザスは直ぐには質問に答えず、ベッドの上に置かれた箱にチラリと視線を流した。 昨日彼が贈ったドレスが入っているはずの箱だ。 「流行りの服は嫌いか。それともデザインが気に入らなかったのか?」 箱を開け、中から取り出したドレスを広げてみせるが、なまえの表情は変わらない。 ザンザスはフンと鼻を鳴らした。 「安心しろ。奴の石頭は俺のより頑丈だ。あれくらいでくたばりゃしねえよ」 ドレスをベッドの上に投げ捨てたザンザスがなまえを引き寄せる。 「来い。お前に見せたいものがある」 ザンザスに連れて来られたのは、見張り付きで厳重に監視されているらしい部屋だった。 「入れ」 ザンザスに促され、扉の電子ロックを解除して開かれたその中に足を踏み入れる。 その中央、スポットライトのような照明に照らし出したものを見て、なまえははっとした。 r⌒ヽ | 六:@) _エニ_ r⌒) o`ヾ、 [ニ]>Θ―ーθ]> 「これは…?」 「凄まじい破壊力を持つロボットの兵隊だ。こいつが空から降ってこなければ、誰も空の上に浮いている城の存在なんざ信じなかったろう。こいつは地上で作られたものじゃねえ。このボディが金属なのか粘土なのか、それすらわからねぇんだからな」 ロボットを見下ろしながらザンザスが説明する。 「ここを見ろ。──怖がるな。こいつは初めから死んでいる」 躊躇するなまえの肩を抱き寄せ、ザンザスはロボットの側へと導いた。 ロボットの胸にあたる部分、紋章にも見える何かを指して「そこだ」と教える。 「同じ印がお前の家の古い暖炉にあったはずだ。このリングにも、な」 息を飲むなまえの顔を見下ろし、ザンザスは彼女の胸から鎖で下げられたリングを指でなぞった。 そこには確かに同じ模様が刻まれている。 「このリングは持ち主を守り、いつの日にか天空のボンゴレへ帰る時の道しるべとしてボンゴレの血統に受け継がれてきたものだ」 「そんな…私、なにも知りません。リングが欲しいならあげます。私たちを放っておいて…」 「ハッ、お前はボンゴレを宝島か何かみてーに考えてんのか?ボンゴレはかつて恐るべき力で天空にあり、全地上を支配した恐怖の帝国だったんだ。そんなものがまだ空中をさまよっているとしたらどれだけ危険か、いくら鈍いお前でもわかるだろうが」 ザンザスは強い口調で言った。 「俺に従え。リングにボンゴレの位置を示させる呪文をお前は知っているはずだ。それを教えろ」 「本当に知らないんです!お願い、ツナに会わせて…!」 手で顔を覆って肩を震わせるなまえに舌打ちし、ザンザスは眉間の皺を深くした。 「お前に手荒なマネはしたくねえ。だがな、奴の運命はお前が握ってんだぜ?」 「えっ…?」 「お前が俺に従うのなら、奴を自由の身にしてやれると言ってんだ」 |