雨の音が聞こえる。
そういえば台風が来ていたのだった。昨日の夜はまさに暴風雨って感じだったけどだいぶ弱まってきたようだ。
と考えたところで昨日何があったかを思い出して一瞬で目が覚めた。

ぱちりと開いた目に、こちらを覗き込んでいた国宝級に美しい顔が映り込む。

「あ、目が覚めた?いま朝ごはん作ってるからもうちょっと待ってて」

ちゅ、とキスをされて、まだバグったままの頭で大変なことになってしまったと内心冷や汗をかく思いだった。

「ご……五条先生……」

「はいはい、僕だよ。どうかした?」

「いえ、あの」

黒いシャツとズボンという格好で上機嫌な様子で朝食の用意をしている五条先生。
対して、半裸のまま五条先生のベッドでぐずぐずしている私。つまり、そういうことである。

「あ、先にシャワー浴びたい?いいよ、そこのドア入ったら脱衣所だから。先に浴びておいで」

「あ、ありがとうございます」

シーツを盾にしながらぴゃっと脱衣所に入った私は、これからどうしようと頭を抱えながらバスルームに入り、シャワーを浴びた。
身体のそこかしこに無数に残る痕は、どうしたって昨夜の出来事を無かったことにはしてくれない。何よりも、五条先生に愛された記憶が心と身体に深く刻み付けられていた。

「これ、制服と新しい下着ね」

「えっ」

「なまえが寝てる間に取りに行っておいたんだよ」

脱衣所から聞こえてきた声に目眩がしそうになった。五条先生にパンツを見られた。
いや、裸も見られてるんだけど、ショックの度合いが違うというか。

「さっぱりしたね。ほら、ここ座って」

着替えて脱衣所から出ると、ドライヤーを片手に待ち構えていた五条先生にソファに座らされて髪を乾かして貰った。
優しく手際よく乾かされ、あまりの気持ち良さについうとうとしてしまって五条先生に笑われた。

それから、チーズオムレツとサラダとパンの朝食を頂いた。言うまでもなく五条先生の手作りである。
何でも出来るけど何でもはやらないようにしている、と以前本人の口から聞いたことがあるけど、本当に何でも出来る人なんだなあ。

「はい、あーん」

「んぐぐ」

「ふふ、可愛いねえ」

知らなかった。五条先生って、恋人にはこんなに甘い人だったんだ。

「不思議だね。なまえには何でもしてあげたいと思えちゃうんだよね。初恋だからかな?こんなの初めてだよ」

にこにことそんなことを言われる。
聞いているこちらは冷や汗だらだらだ。

「あの、五条先生」

「ダメ。忘れないよ」

一緒に教室に行こう、とドアを開けてくれた五条先生を振り返ると、怖いくらい真っ直ぐに私を見つめる六眼と視線がぶつかった。先生は笑っているのに何故か寒気を感じて身体が震えてしまう。

「ワンナイトで終わると思った?残念。もう離してあげないよ」


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