寝返りをうとうとして、身体が全く動かないことに気がついた私はぱちりと目を覚ました。
金縛りかと思ったそれは、いつの間にかベッドに侵入していた五条先生の腕にがっちりとホールドされていたせいだった。思わずため息が出てしまう。
五条先生は自分が大男だという自覚を持って欲しい。体格差も身長差もある先生にこんな風に抱き締められていたら身動きもままならないのだから。

「先生、五条先生、起きて下さい」

「んー……もうちょっと……」

そう言った先生に更に懐深くに抱きすくめられる。ぽやぽやとした寝惚けた声は可愛いけど、これでは起きられない。困った。
五条先生はショートスリーパーだからこんな先生の姿を見るのは珍しい。もしかしたら夜明け前に帰って来てまだ寝入ったばかりだったのかもしれない。だとしたら起こしてしまうのはかわいそうな気がした。

しょうがないなあ、と大人しく腕の中でじっとしていると、くくっと喉で笑う声が聞こえて先生の肩が震えた。

「もう!起きてたんですね!」

「ごめんごめん、あまりにも可愛いから、つい寝たふりしちゃった」

ごめんね、と優しい声音で囁いた先生に宥めるようなキスをされる。
至近距離に迫った美しい顔の破壊力に心臓が止まるかと思った。寝起きに拝むには先生のご尊顔は威力がありすぎる。

「くち開けて」

甘ったるい美声に促されて僅かに口を開けば、すぐにぬるりと生暖かい舌が侵入してきた。寝起きにするには情熱的すぎるキスに翻弄されて、あっという間に思考が蕩けていく。

「んっ、んっ……ふ、ぁ……」

「かーわいい。キスされるとすぐ蕩けた顔しちゃって。まだ慣れない?それとも僕のキスが上手すぎるから?」

両方です。と正直に答えようにも、はくはくと息をするのがやっとだった。
その合間にも、ちゅ、ちゅぱ、とキスが繰り返される。
気をつけろ、五条先生そういうところあるぞ、と伏黒くんの声が聞こえた気がした。
ごもっともな忠告だが、身も心も五条先生にすっかり奪われてしまった今となっては何もかもが遅すぎた。

「いま他の男のこと考えてたでしょ」

青い瞳に軽く睨まれ、喉元にがぶりと食いつかれる。ぢゅ、と吸われて痕がつけられたのがわかった。いつもは見えるところにはつけないでいてくれたのに。

「あっ、せんせ、」

「お仕置きだよ。浮気なんかするから」

「ち、ちが」

「違わなーい。せいぜい見せつけてやりな。お前は僕のものだってことをさ」

先生の大きな手がぷちぷちとパジャマのボタンを外していく。

「だめです、遅刻しちゃう」

「ちょっとくらい平気平気。僕も遅刻して行くんだから大丈夫だよ」

それ、全然大丈夫じゃないです。
また野薔薇ちゃんに怒られちゃう。

そんな考えも、なけなしの抵抗も、先生から施される巧みな愛撫の前では全くの無力だった。


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