最近寝つきが悪くて、とうっかり口走ってしまった私を、赤井さんはドライブに連れ出してくれた。

雨の中でけぶる街並み。

前の車の赤いテールランプが描く残像。

フロントガラスに飛んで来る雨粒を、ゆっくりと規則的に動くワイパーが跳ね退けてゆく。

目を閉じて心地よいエンジン音に耳を傾けていると、ちょうど信号で止まったところで、運転席から身を乗り出してきた赤井さんにキスをされた。
掠めとるようなそれの感触に思わず目を開ける。

「Nighty night.」

少し悪戯っぽく笑んで告げられた言葉に、またたきをしてから私も微笑みを返した。

どんな男の人にも負けないくらい男らしくて、超然たる雄というフレーズがよく似合う私の恋人は、どうやら今夜はとことん甘やかしてくれる気らしい。

私も子供に戻った気分で甘えようと思う。


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