長かった夜が明けた。

結局一睡も出来ないまま広場へ確認をしに行った私は愕然とした。

「森さん…!」

森さんが吊るされていた。
そんな、森さんは狩人だったはずだ。なのに何故。

「どうして…」

「君以外全員が彼を吊るすことを選択したからだよ」

「太宰さん…」

何ということもないように言ってのけた太宰さんの冷徹さに、冷や汗が出るのを感じた。
この人は、まさか。

「そう、私が人狼だよ」

「そして、ぼくもね」

「そんな…フョードルさんまで…」

「貴女を翻弄するのは楽しかったですよ、なまえさん」

「いかにしてなまえちゃんを最後まで残らせるか、そればかり考えていたけど、意外に容易かったな」

「貴方の演技はなかなか見事でした」

「君もね。見るからに怪しかったのに善人ぶって見せていたのだから大したものだ」

フョードルさんと太宰さんはお互いに相手の手並みを讃えると、「それで、本題ですが」と切り出した。

「ぼくはなまえさんを噛みたい」

「私はなまえちゃんを噛みたい」

二人同時に宣言され、私は寒気を感じて震えた。

「似た者同士というわけですか。いいでしょう」

「話が早くて助かるよ」

「えっ、えっ…?」

「大丈夫、痛いのは一瞬だけですから」

「なるべく痛くしないよう努力するよ」

「ひっ」

「ふふふふふ」

「ははははは」


私は我慢出来ずに回線を切った。
パソコンから離れて、落ち着きなく部屋の中を歩き回る。

大丈夫、あれはただのゲームに過ぎない。
本当に襲われることなどあるはずがないのだ。

その時、玄関のインターホンが鳴った。

…嫌な予感がする。


かちりと鍵が開く音。

そして、

「逃げるなんて酷いじゃないですか、なまえさん」

「いきなり逃げたりするから傷ついたよ、なまえちゃん」

二匹の人狼が、朝日を背に立っていた。

「責任をとって、大人しく噛まれて下さい」

「あ…あ…」

長身の二人の影が長く伸びてきて私を覆い尽くす。
同時に伸びて来る手、手。

「それでは、早速」


「いただきます」
「いただきます」


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