偶然にも安室さん…いや、降谷さんの正体を知ってしまった私は、彼の自宅にいた。

何をどこまで知っているかの確認のためだ。

普段私が知っている優しい安室さんとは纏う空気が全く違う。

ほぼ訊問に近い形で様々なことを聞かれた私は、殆ど茫然自失となりイエスノーしか言えない状態になっていた。


「今言った内容については守秘義務が生じるから、君には『誰にも話さない』という主旨の書類にサインをしてもらうことになる」

「はい」

「破った場合について説明は必要かな」

「いいえ」

「物分かりが良くて助かるよ。早速今日から僕の協力者としてよろしく頼む」

「はい」

「といっても、特別な何かを期待しているわけじゃないから安心してくれ。君はいつも通りポアロに通ってくれればそれでいい」

「わかりました」

「よし。では、次だ。もうすぐバレンタインだが、君は誰かに渡す予定はあるかい?」

「いいえ」

「僕にも?」

「はい」

「困ったな…君からのチョコを期待していたんだけど」

「さっき、特別な何かを期待しているわけじゃないから安心してくれと言われました」

「いや、それは仕事の話で…いまはプライベートな事柄について確認中なんだ。わかるかい?」

「はい」

「それで、僕にチョコを渡す予定はないと、君はそう言うんだね」

「はい」

「わかった。そういうことなら、僕から君に逆チョコを贈ろう」

「いいえ」

「いいえ?」

「はい」

「…これははっきり言わないとダメそうだな…。僕は君が好きだ。君に対して特別な好意を抱いている。だから、出来れば君からチョコを貰いたいし、無理なら僕から…俺からチョコを渡したい。わかってもらえたかな?」

いつの間にか降谷さんに手を握られていた。
怖いくらい真剣な眼差しを向けられて困惑する。

「君が好きだ」


バレンタイン決戦
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