一日たっぷりアトラクションで遊んで、程よい疲労を感じながら入ったレストランの食事は、とても満足のいくものだった。

「わあ、もう真っ暗」

ライトアップされているアトラクションと、所々にある外灯のお陰で周りは明るいが、空は完全に夜の帳が降りきっていた。

「そろそろパレードの時間だな」

零さんの言葉に、そう言えばと思い出す。
この遊園地ではハロウィン期間限定でゾンビに扮したスタッフが園内を徘徊するゾンビパレードを行っているのだ。

「ほら、早速現れた」

指差した方向を見れば、通路からゾロゾロとゾンビの群れが出てきたところだった。
あまりにもリアルな扮装に、思わず零さんの腕に縋りつく。

「大丈夫、偽者だよ」

広場に溢れ出したゾンビ達は、あちこちで観客に襲いかかるふりをして脅かしていた。
幾つも悲鳴があがり、辺りに響き渡る。

「ん?…あれは」

「えっ、なんですか?」

零さんの視線の先には、よろよろとおぼつかない足取りで歩く一体のゾンビがいた。
そのゾンビが近くにいたカップルに襲いかかる。
血飛沫があがり、随分派手な演出だなと感心していると、ゾンビに噛まれた男性のほうが女性に噛みつくのが見えた。
悲鳴をあげて逃げようとする女性を、先ほどのゾンビと二人がかりで押さえ込んで噛みついている。
悪ふざけにしてはたちが悪い。

スタッフもそう思ったのか、ゾンビに扮していない普通のスタッフが急いで止めに入った。
しかし、

「ぎゃああああ!!」

凄まじい叫び声とともに、スタッフの身体が食い千切られる。

「まさか、本物なのか?」

「ええっ!?」

気付けば、そこかしこで似たようなことが起きていた。

「れ、零さん!」

「大丈夫だ。俺から離れるな」

零さんが懐からハンドガンを取り出す。

私は彼にぴったりとくっつき、たった今阿鼻叫喚の地獄と化した遊園地からの脱出を目指すのだった。


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