カレーには福神漬けが付き物だが、うちの本丸ではきゅうりの浅漬けが一緒に出される。
光忠が漬けたものだ。

夏野菜がたっぷり入ったカレーは短刀達の好物のひとつで、今日も食卓にはカレーときゅうりの浅漬けが並んでいた。

「今日のご飯も美味しいなあ。光忠は良いお嫁さんになれるね」

カレーを食べ終えて、きゅうりをカリコリ食べてそう褒めると、光忠は困ったように微笑んだ。

「僕はお嫁さんをもらう側がいいんだけどな。例えば、君みたいな可愛いお嫁さんを」

次の瞬間、ガタッと音を立てて長谷部が立ち上がった。

「貴様!ふざけるな!主と祝言を挙げるのはこの俺だ!」

「主がいつそんなことを言ったんだい?思い上がりも程々にね、長谷部くん」

「主の一番はこの俺だ」

「主の一番役に立っているのは僕だよ」

「冗談は休み休み言え。朝から晩まで主のお世話をしているのは俺だ」

「おはようからおやすみまで主の世話を焼いているのは僕だよ」

「俺は主のお身体を洗って差し上げている」

「僕は主を優しく起こして身支度を整えてあげているよ」

二人の言い争いは次第にエキサイトしていく。
光忠と長谷部の間にバチバチと火花が散っているのが見えるようだった。

「主」

「主」

二人が同時に私を振り返った。

「俺こそが主の一番ですよね」

「一番は僕だよね」

「えっと…」

鬼気迫る表情で詰め寄られて言葉を濁す。

何故なら、私は二人ともとそういう関係になっていたからだ。

今更どちらかを選べと言われても困ってしまう。

「主」

「主」

じり、と二人が迫ってくる。

「二人とも大事だよ!二人とも一番だから!」

自棄になってそう叫んだ私を、薬研がやれやれと言いたげな顔で見ていた。
だって、本当のことだもん!

「そんなお言葉では納得出来ません」

「そうだよ、この際だからはっきりさせよう」

光忠と長谷部に両脇から抱えられる。

「閨の中でなら、どちらが良いか決められるだろう?」

「床の中でも俺が一番ですよね、主」

「え、いや、ちょっと、あの」

二人に抱えられて連れて行かれる私の姿を、他の男士達は薬研と同じくやれやれといった風に見送っていた。


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