この時間になると、台所から良い匂いが漂って来るので空腹に拍車がかかって困る。
つい釣られて見に行ってしまうのだが、これは仕方ないと思う。
料理上手なうちの刀達が悪い。

「今日は炊き込みご飯だよ」

こっそり覗こうとした途端、光忠に声をかけられて、悪いことをしているわけでもないのに思わずドキッとしてしまった。

「おいで」

光忠がそんな私に笑って手招きする。
素直に光忠の側にいくと、賀茂茄子の田楽を一つ味見させてくれた。

「美味しい」

「良かった。お腹すいたかい?」

「うん、すごく」

「もうすぐ完成するからね」

光忠はそう言ってお味噌煮の味見をした。
料理をしている光忠はかっこいい。
もちろん、戦に行く時の光忠もかっこいいけど。
つまり光忠は常にかっこいいのだ。

「光忠」

煮物の様子を見ている光忠の腰に後ろから抱きつく。
広い背中にすりすりと頬擦りすると光忠が笑う気配がした。

「ところで、アンケートはやってる?」

「うん」

「今日は誰に投票するのかな」

「えーと…」


もちろん光忠だよ!


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