指令ゲームとは、まず女性が籤を引き、次に引いた籤の番号の男性が指令カードを引いてそこに書かれた指令に従うゲームである。
なまえが引いた籤に書かれていた番号は『1』。

「えっと、1番の人は……」

「私です」

キョロキョロ見回すなまえの傍らにいた赤屍が手を挙げる。

「次は指名された番号の男性が指令カードを引くのでしたね」

言いながら、赤屍はカードの入った箱の中に手を差し入れた。
カードを一枚掴んで箱から取り出す。
そこに書かれた内容に目を走らせていた赤屍の唇に笑みが浮かんだ。

「ほう……なるほど」

「な、なんて書いてあったんですか?」

「お気になさらず。さあ、指令を実行しますので後ろを向いて下さい」

「………………」

なまえは不安を隠せないまま赤屍に背を向けた。
──と、その髪にそっと何かが触れる。

「あ…赤屍さんっ?」

感触からどうやら髪を梳かれているらしいことは分かったが、見えない以上不安なことに変わりはない。
びくびくするなまえの背後で、赤屍はクスッと笑った。

「トリートメントはしていますか?」

「…は?」

「手入れは充分にしたほうがいい。人間は傷み易いですから、ね…」

?マークを目一杯頭上に浮かべるなまえに、赤屍は相変わらず愛しげに髪を弄びながら笑う。

「読んでみますか?どうぞ」

赤屍から渡されたカード。
そこには、背後から髪を触りながら先ほどの台詞を言うようにという内容の指令が書かれていた。

「残念です。もっと艶めいた内容を期待していたのですが」

不満そうな赤屍とは逆に、なまえはほっとした。



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