完全にとらえたと思った。

今まで幾度となく敵を屠ってきた鋭い斬撃。
しかし、予想に反して刃は空を斬り、寸でのところでかわされてしまっていた。

思わず舌打ちする。

刃から逃れた相手は余裕の笑みを浮かべて数歩先に佇んでいた。
片手に赤い剣を携えて。

「初めまして。運び屋の赤屍蔵人と申します」

「へし切長谷部だ」

長谷部は刀を構え直した。

「恨みは無いが、主命だ。死ね」

宣言して再び斬りかかる。
赤屍はその一撃を赤い剣で難なく弾いてのけた。

「貴様を倒して一位になる!」

「出来ますかねぇ、貴方に」

激しく刃がぶつかりあい、火花が飛び散る。
何度も何度も。

今まで蓄積してきた戦闘経験から、長谷部は相手の化け物じみた強さを感じとっていた。
だが、ここで退くわけにはいかない。
死ぬのは楽だが、主命を果たせないのは論外だ。

「圧し斬る!」

「愉しいですねぇ。実に愉しい」


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