育成地である大陸の上空には飛空都市が浮かんでおり、そこには今回の帝王試験をサポートするための施設が幾つか用意されていた。

育成地の状況を数値化して確認出来る、王立研究院。
自由に出入りして息抜きが出来る場所として解放されている、庭園と森の湖。
そして、占いの館。

最後のソレを紹介された時には何の冗談かと思ったが、相手は大真面目だった。
何でも、特殊な能力を持つ占い師とやらがいて、この帝王試験に関わる者達の親密度や相性を教えて貰ったり、相性アップのおまじないをしてくれるのだそうだ。

その占いの館で幸村は意外な人物に会った。
同じ帝王候補でライバルでもある赤司征十郎だ。

「やあ、顔合わせの時以来だね」

「…まさか、占って貰っていたのかい?」

「ああ。一通りデータの確認と、ついでに相性アップのおまじないも済ませたところだ」

赤司は気まずい様子を見せることも無く、あっさり肯定してみせた。
思わず言葉を失ってしまった幸村に挨拶をして悠々と立ち去って
いく。

幸村自身は別に占って貰おうと思ってここに来たわけではない。
この試験中に利用可能とされている関連施設を順番に訪問していたというだけの話だ。

幸村は悩んだ。

もしこれが年頃の女の子の行動であったなら悩む必要などなかったかもしれない。
しかし相手は赤司だ。
およそ占いやおまじないなどというものに頼りそうもない男なだけに、これには何か戦略的な意図が隠されているに違いない。そう幸村は考えたのだった。
こちらを撹乱するための行動か、はたまた後々効果が表れる布石か……。

悩む幸村に今出来る事はひとつだった。


「俺にも、相性アップのおまじないをして下さい」


笑顔で迎えてくれた女占い師に、幸村は真剣な表情で依頼した。



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