育成地である大陸の上空には飛空都市が浮かんでおり、そこには今回の帝王試験をサポートするための施設が幾つか用意されていた。

育成地の状況を数値化して確認出来る、王立研究院。
自由に出入りして息抜きが出来る場所として解放されている、庭園と森の湖。
そして、占いの館。

最後のソレを紹介された時には何の冗談かと思ったが、相手は大真面目だった。
何でも、特殊な能力を持つ占い師とやらがいて、この帝王試験に関わる者達の親密度や相性を教えて貰ったり、相性アップのおまじないをしてくれるのだそうだ。

なまえはともかく、男同士の相性や親密度を上げてどうしろというのか。
普通ならばそう疑問に思うところだが、赤司はこれは試合での連携に有効活用出来そうだと考えた。

その彼が足を進めた先は、当然占いの館だった。
赤い三角形の天幕の中に入ると、入口の正面に設置された台座と、その向こう側に座っている女性が目に入った。

「あら。いらっしゃい、帝王候補さん」

豊満な肉体を露出度の高い衣装
に身を包んだ妖艶な女占い師が赤司に笑顔を向ける。
彼女がこの占いの館の主であることは間違いない。

「ここでは親密度を確認したり、相性を良くしたり出来るけど、今日はどんな御用かしら?」

「まずは親密度を確認したい」

「親密度の確認ね。分かったわ」

占い師は軽く瞳を伏せ、台座に置かれた水晶を包み込むように両手をかざした。

「…星の囁きが聞こえてくるわ」

赤司の目の前の空間にまるでプロジェクターで映し出したように画面が表れる。
どうやらホログラムのようなものであるらしい。
各自の特徴が良く表れた小さな顔アイコンとともに、現在の親密度と相性が数値で表示されている。

「この相性の数値は具体的にどんな影響を及ぼすものなんだ?」

「そうね、“仲良くなりやすさ”と言えばわかるかしら。相性が良ければ相手に話しかけたりした時に親密度の数値が上がりやすいし、同じ行動を取っても相手が悪いと親密度は上がり難いのよ」

つまり効率の問題というわけか。

「そ
れなら、なまえと僕の相性を上げて貰いたい」

それならばと、赤司は占い師に相性アップのおまじないを頼んでみた。
実際どの程度数値の変動に差があるのかは試してみなければわからない。
そしてどうせやるなら相手はなまえ以外に考えられなかった。
結果によっては各自の親密度の調整も行えばいい。

「征十郎の心、なまえに届け。ラブラブフラッシュ!」

高らかに唱えられた言葉に続いてカメラのフラッシュのような光が何度か瞬き、室内を明るく照らし出した。
呪文と言うよりは掛け声のようなものであったのかもしれない。
いずれにしても重要なのは結果だ。
早速親密度を確認してみると、数字にははっきりとその効果が表れていた。
こうして明確に数値化されていると非常に分かりやすい。
単なる『おまじない』というよりも『魔法』に近い力であるように思えた。

「頑張ってね、帝王候補さん」

「ああ」

天幕から出て行こうとした時、丁度中に入ろうとしていた幸村と入れ違
いになった。
彼は酷く驚いてが、赤司はあくまでも余裕の態度を崩さないまま立ち去った。

明日はなまえをデートに誘ってみよう。
それで相性を上げた効果がどれくらいのものなのか分かるはずだ。



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