ある日、沢田綱吉は恐ろしい可能性に気がついた。

彼にはなまえという名前の双子の姉がいるのだが、彼女は最近、雲雀恭弥と仲が良いと噂になっている。

あの凶悪な風紀委員長を飼い馴らした女として、草壁をはじめとする風紀委員達は崇拝の眼差しで彼女を見ているのだとか。
綱吉にしてみれば、「それなんて猛獣使い?」というのが正直な感想だった。

噂の真偽はともかくとして、もしかしてもしかすると、この先二人は付き合ったりなんかしたりして、更にもっと上手くいったら将来は結婚するかもしれない。
そうなった場合雲雀は綱吉の義理の兄となるわけで。

少々天然の入ったあの姉のことだ。

「ツナ、今日から恭弥さんのことは、ちゃんと“お義兄さん”って呼んでね」などと無邪気な笑顔で言い出しかねない。

「…うわあ……ないよないよ!無理無理無理無理無理無理イィ!!!!絶対咬み殺されるって!!!」

綱吉は頭を抱えて床の上を転げ回った。
そんなバイオレンスな親戚関係は嫌だ。
確かに頼りになる兄貴が欲しいと思ったことはある。
雲雀も非常に頼りになる男だ。
物騒な意味で、だが。

でも今は、綱吉にはもうディーノという兄貴分がいる。
ディーノは綱吉が群れているからといって、いきなり鞭で叩いてきたりはしない。
ディーノは昼寝の邪魔をされたからといって、いきなり鞭で叩いてきたりはしない。

「ヒバリさんがお義兄さんだなんて、やっぱり考えられないよ……」

「甘いぞ、ツナ」

綱吉の前には、いつの間に帰ってきたのか、小さな家庭教師の姿があった。

「リボーン…なんだよ甘いって?」

「なまえと仲がいい男はヒバリだけじゃねえってことだ」

綱吉は首を傾げた。

「いや、まあ、確かにヒバリさんだけじゃなくて獄寺君や山本だってなまえとは仲がいいって言えるんだろうけどさ」

「獄寺はお前の姉貴だからこその敬愛、山本のは友情だ。そういう意味じゃ、ヒバリはかなり深刻なレッドゾーンだな。そして、そのレッドゾーンに該当する男はもう一人いる」

「誰だよ?」

「六道骸だ」

「んなっ、な、な、な、なに言ってんだよリボーン!!!!!」

「なんだ、本当に気が付いてなかったのか。なまえのイタリア語は骸仕込みなんだぞ、ツナ」

「そ、そんな……」

リボーンはふうと溜め息をついた。

「その内、骸に『僕のことはお義兄さんと呼んで甘えてくれていいんですよ』なんて笑顔で言われる日が来るかもしれねぇな」

「………」

「おい、ツナ? ……チッ、気絶しやがったか。ダメツナめ。話はこれからだってのに、しょうがないヤツだ」

真っ白な灰になって気を失っている弟子を前に、本国の年寄り連中の間で「猛獣使いと名高い10代目の姉を是非ザンザスの嫁に!」という話が出ていることをどう切り出したものか、真剣に悩むリボーンだった。



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