グリフィンドール寮に組分けられた綱吉は少々面喰らっているようだった。
ダメツナと呼ばれる自分が、よもや勇猛果敢で知られるグリフィンドール寮になるとは思ってもみなかったのだろう。
獄寺や山本も同じ寮だ。

だからなまえも当然グリフィンドール寮に入りたいと願っていた。
組分け帽子を被せられた時も、絶対にグリフィンドール寮になりたい、それが無理ならハッフルパフで…!と祈り続けていた。
それなのに──



「やあ、なまえチャン。スリザリンへようこそ」

「ハハン、歓迎しますよなまえさん」

白蘭と桔梗が笑顔でなまえを迎える。
一見すると、下級生を歓迎する面倒見のいい上級生に見えないこともない。
しかしなまえには彼らの笑顔の裏側に何かどす黒い思惑が渦巻いているように見えて仕方なかった。

「ほら、おいで。ここ座りなよ」

白蘭が笑顔で自分の隣を指差す。
だが、なまえが断るよりも早く、横から伸びてきた腕が彼女をかっ攫った。

「引っ込んでろドカス」

ザンザスだ。
なまえの華奢な身体を軽々と片腕に抱えた彼は、白蘭達がいるのとは反対側に彼女を下ろした。
それをすかさず骸と雲雀が挟みこんでカバーする。

「この子は僕の獲物だよ」

「なまえさんは僕が面倒を見ますから結構ですよ」

「へえ…君達が、ねえ?」

ザンザスと骸と雲雀、そして白蘭と桔梗の間に見えない火花が散る。

遠くグリフィンドール寮のテーブルからその一部始終を眺めていた綱吉はガタガタ震えた。
蛇とマングースの戦いどころではない。
ラスボスクラスの男達が揃い踏みとは、なんて恐ろしい寮だろう!
そんな男達に囲まれたなまえが不憫でならなかった。
でも寮が分かれてしまった以上、綱吉にはどうしてやることも出来ない。

そうこうしている内に、決着は白蘭が引く形でおさまったようだった。
ザンザスと骸に挟まれて椅子に腰掛けたなまえの姿が見える。

「でも意外ですね。君はてっきりハッフルパフに入ると思っていたのに」

骸の言葉になまえは弱々しく微笑んだ。

「うん…私もそう思ってたんだけど…」

むしろそのほうが良かったのに、組分け帽子はいったい何を考えてスリザリン寮に入れたのだろう?
なまえにはさっぱりわからなかった。

「意外と言えば、私、恭弥さんは絶対グリフィンドールだと思ってました」

一人離れて座っている雲雀に声をかける。
群れている者達がいれば誰彼構わず咬み殺しにかかっていく行為を勇猛果敢と呼べるかどうか微妙なラインだが、少なくとも『狡猾』というスリザリン寮の特性は雲雀には当てはまらない気がしたのだ。

「僕は別にどの寮だろうと構わなかったんだけど、スリザリン寮にいれば他の三寮の草食動物達を咬み殺し放題だと聞いてね」

「だ、誰がそんなことを!?」

どう考えてもデタラメだ。
しかし雲雀は涼しい顔で向かいを指差した。

「彼に聞いたよ」

「ちゃおっス」

「リボーン…!」

「ちなみに、お前をスリザリン寮に入れるように組分け帽を脅…言い聞かせたのも俺だぞ」

やっぱりか!!
なまえはテーブルに力無く突っ伏した。

波乱の学校生活の始まりだった。



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