薬局は病院の外にある。
提携薬局だったり直営だったり様々だが、ここの場合は提携薬局のようだ。

なまえを抱えて薬局の自動ドアから中に入ったザンザスは、すぐに歩みよってきた薬剤師に処方箋を渡した。
後は病院と同じく呼ばれるのを待つだけだ。

「インフルエンザですな」

肩先ぐらいまでの長さのねっとりした黒髪の男がザンザスに抱っこされたなまえに目線を据えてそう呟く。
彼の前、カウンターに置かれたカゴの中には処方された薬と袋が入っていた。

「随分と熱が高いようだが…大丈夫かね?」

ザンザスの腕の中で、なまえが小さく頷く。

「我輩が調合した薬を飲めばすぐによくなるはずだ。安心したまえ」

「はい…有難うございます、スネイプ先生」

こいつも知り合いか、とザンザスはいささかうんざりしながら薬剤師を睨みつけた。
赤屍に負けず劣らずクセのありそうな胡散臭い男だ。

「さっさと薬を寄越せ」

催促すると、薬剤師は僅かに片眉をあげて見せ唇を歪めて笑った。

「こちらのカプセルを朝昼晩、食後に一錠ずつ。こちらの胃の薬は朝晩の食前に飲ませるように」

薬剤師がとうとうとした口調で薬の説明をする。

「それと、服用の際の注意事項がいくつか──」

「必要ねぇ」

「では、必ずプリントをご覧になるようお願い申しあげる。説明を聞かなかったせいで後日殴りこまれては困りますからな」

皮肉げに笑って言った薬剤師の言葉をザンザスは鼻で笑い飛ばした。
なまえがこんな状態でなければ、そして彼女のかかりつけの病院と薬局でなければ、とっくに消し炭にしていたところだ。

薬局を出て車に乗ったザンザスは、熱でぼんやりしているなまえに顔を近付けると、低く囁いた。

「もうあの病院に行くのはやめろ。薬局もだ」

「どうして?」

「どうしてもだ。気に食わねぇ」

「えええええ…」

嫉妬や独占欲につける特効薬は、残念ながら存在しない。



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