本格的に天候が崩れる前にと、私達はスキー場を後にした。 宿泊しているペンションまでは、車で20分ほど。 信号など殆どない道でのことだから、結構距離がある。 暫く車を走らせていると、案の定天候は崩れ始めた。 あのまま滑り続けていたとしても直ぐに切り上げるハメになっていただろう。 そうなったら帰り道でも大変な思いをしていたはずだ。 視界の悪い道を運転していて、もし事故を起こしてしまったら、徒歩でこの道を彷徨うことになり、最悪の場合遭難してしまっていたかもしれない。 私はハンドルを握るリヴァイ先生の横顔を見つめた。 さっき予言のようだと感じたのは間違いではなかったらしい。 先生にはこうなることがわかっていたのだ。 さすがにこの季節は陽が落ちるのが早い。 ペンションに着く頃には辺りは完全に暗くなっていた。 ちらちらと舞う程度だった雪は横殴りの風とともに吹き付けてきて早くも吹雪の様相を呈しはじめている。 ペンションまでのほんの五分程度の道のりがとてつもなく長く感じられた。 もっとも、信号も渋滞もない雪道を車で五分なので、人間が自分の足で歩くとしたらかなりの距離になるのだが。 しかも雪だし、夜だし、周りに他の建物はないし、下手したら遭難しかねない。 「もし今車の前に突然イタチか何かが飛び出してきて事故って横転したりしたら大変な事になるかもしれねぇな」 「ちょ、不吉なこと言わないで下さいよ!」 「冗談だ」 先生が洒落にならない冗談を言う。 不安そうな表情で窓の外を眺めていた私がよほどおかしかったのか。 「俺の運転が信じられないか」 「いえ、信頼してます」 「ならいい」 「先生、今日はよく話しますね」 「バカ言え。俺は元々結構喋るほうだ」 前方にペンションの外観が見えた時にはほっとした。 ペンションの前の駐車場に車を停めて降りると、先生が私の分のスキーも持ってくれた。 二人で並んでペンションに向かう。 |