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すべて予定通り。

心配していたイレギュラーの介入もなく、作戦は成功裏に終わった。
北関東に位置する山間の小さな集落の跡地での任務は、小競り合いとも呼べぬ些細な戦闘で呆気なく解決した。

しかし、他のゲットーに住む日本人達への影響力は大きい。
場所が場所だけに軍が嗅ぎ付けてくることもないだろう。
後は引きあげるだけだ。
ただひとつ問題があるとすれば、一向に止む気配もなく降りしきるこの豪雨くらいのものだった。

『ゼロ、大丈夫ですか?』

「問題ない。カレン、君は扇達とともに事前に知らせておいたルートから引き上げろ。私は別のルートを使う。合流地点で待機して連絡を待て」

『分かりました』

通信を切ったゼロは、仮面の内側で短く嘆息した。
山の天候は変わりやすい。この突然の豪雨も当然想定の内である。
崖崩れなどの危険性も考慮して、既に安全な脱出ルートも確保してある。
だからこそ、暫く動くわけにはいかなかった。

他のメンバーと違って、彼が今いる場所から合流地点まではかなり距離がある。
カレンやなまえレベルの卓越した操縦技術が無い以上、視界が効かない中で長時間山道を移動するのは非常に危険だ。
彼の計算ではまだ暫く降り続くはずのこの雨が弱まるのをひたすら待つしかない。
優秀な騎士であった母の血を受け継いでいながらなんとも不甲斐ないことだと、少なからず苦い思いを噛み締めながら、ゼロは改めて通信スイッチを押した。
傍らにいるはずのなまえに向かって通信機越しに声をかける。

「なまえ、そこにいるな?」

『はい』

「少し先に山小屋がある。雨足が弱まるまでそこで暖を取ろう」

『了解しました』

答えるなまえの声は堅い。
気をつけていないとうっかりいつもの調子で話してしまいそうだから、と言っていたのを思い出して、ゼロは一人唇を笑ませた。

土砂降りの中、NMFの下方がぬかるみに嵌まりこまないよう気をつけながら、木々の間を慎重に移動する。
ものの数分もせずに山小屋に到着したゼロとなまえは、コクピットから降りてその中へと駆け込んだ。
そのほんの僅かの間にずぶ濡れになってしまったが仕方がない。



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