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ゼロ──ルルーシュが立案した、式根島における枢木スザク捕獲作戦は、途中までは首尾よく進んでいた。

スザクの強硬な態度に流石のゼロも手こずってはいたが、ゼロならば、とカレンもなまえも作戦の成功を信じて見守っていたのだ。
いや、そうするより他なかった。
ここで説得出来なければ、スザクを暗殺すべきだという意見を押さえきれなくなってしまう。
ルルーシュが幾ら反対していても、スザクとランスロットが黒の騎士団にとって最大の脅威であることに変わりはないのだから。

しかし、軍部司令からスザクに対して、ミサイル攻撃開始の連絡が入った瞬間、膠着状態だったその場の状況は一変した。
命令に従い死を覚悟したスザクがゼロを押さえ込む。
それを見たカレンとなまえは、ナイトメアから飛び降り、彼らに向かって駆け出していた。

カレンの叫び声。

飛来するミサイルを撃ち落とそうと、激しく響き渡る銃撃の音。

ナイトメアの駆動音。

避け切れずに被弾したナイトメアが爆発する音。

耳が痛くなるような混乱のさなか、なまえは突然辺りが暗く陰ったことに気付き、はっとして頭上を見上げた。
日の光を遮っていたのは、上空に現れた巨大な戦艦。
その前方部が大きく口を開いたかと思うと、二つの赤い目玉にも似た光が不気味に輝いた。

「なまえ!」

誰かが叫ぶ声が聞こえる。
放たれた赤い光が砲撃なのだと理解した次の瞬間、なまえの意識は白く灼け落ちていた。

「──いいじゃないか、結果的には皆助かったのだから。君の大切な契約者だってちゃんと無事だっただろう?」

暗闇に響く、柔らかなソプラノ。
幼い少年のものらしいそれを、なまえはどこかで聞いた事がある気がした。
髪を梳く優しげな手つきにも覚えがある。
目を開けて確かめなければ、と思うのだが、瞼はおろか、身体中がぴくりとも動かなかった。

「そう、なまえも一緒だよ。勿論怪我なんてさせてないさ」

誰かと会話しているらしき話し声が続く。
だが、不思議なことに、相手の声はなまえには聞こえなかった。
電話か何かでここにはいない相手と話しているのだろうか?

「そう言われてもね……こちらにもこちらの都合があるんだよ。君も来たければ来ればいい」

ふふ、と笑って、少年は立ち上がったようだった。
半ば覚醒しかけた意識の端でそれを感じたなまえは、もう一度身体を起こそうと試みる。
今度は何とか動いた身体に安堵し、上半身を起こして辺りを見回すが、既に周囲には声の主の姿はなかった。
移動する足音は聞こえなかったのに。
繊細な手つきで髪を梳いていた指先の感触を思い出しながら、自分の指で髪に触れてみる。
しかし、そこには温もりは残っていなかった。



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