結局、ルルーシュの予想通り、スザクの「仕事」は深夜を通り越して明け方に近い時間に終わった。 無論食堂は閉まっている。 パイロットスーツを脱いだスザクは、仮眠室で休憩を取ろうと思ったが、途中で思い直して弁当を広げることにした。 せっかくなまえが持たせてくれたのだから、やはり少しでも早く食べておきたい。 他に人気のない休憩室でテーブルに弁当を広げて食べ始める。 冷めていても充分美味しい唐揚げを堪能していると、こちらも半徹の上司がふらふらと近づいてきた。 「あれぇ? スザク君、お弁当なんて持ってきてたの?」 「はい。連絡を貰った時に夕食をご馳走になっていたので、その友達が持たせてくれたんです」 「そうなんだ……あ、プリンがある! ど〜れ、ひと口」 「あっ」 目敏くデザートのカップを見つけたロイドは、スプーンを奪うと、さっさとプリンを口に運んでしまった。 「ひどいですよ、ロイドさん。僕のなのに…………ロイドさん?」 抗議しようとした相手の様子がおかしい事に気付いて、スザクは首を傾げる。 ロイドは妙な顔をしていた。 いつもなら顔を輝かせて喜びを表しているはずなのに。 作戦の時だってこんな神妙な──何かを考え込んでいるような顔は見た事がない。 「スザク君、このプリン誰が作ったの?」 「え? 僕の幼馴染みですけど……どうかしましたか?」 「ふぅん…そう……幼馴染みねぇ……」 「? ロイドさん?」 「ああ、ごめん。何でもないんだ。気にしないで。食べかけだし、このプリンは貰っていくよ」 「あ、はい、どうぞ」 カップを持ち上げて揺らしてみせるロイドに、スザクは仕方ないなと笑ってみせる。 この気まぐれな上司の横暴にはもう慣れっこだ。 「今日はご苦労様。それ食べたらゆっくり休むんだよ。君はうちの大事なデヴァイサーなんだから、まだまだ壊れて貰っちゃ困るからね」 「はい」 「じゃ、お休み〜」 片手に持ったプリンのカップゆらゆらと揺らして、ロイドは休憩室を出ていった。 一人格納庫に戻ったロイドは、自分専用のパソコンのディスプレイを覗き込む。 メールボックスに一通メールが入っていた。 フォルダを見ただけで誰からのメールであるかは一目瞭然だ。 ──差出人は、シュナイゼル・エル・ブリタニア。 何というタイミングの良さ、と思わず唸ってしまうほどだった。 こうも狙いすましたような行動をとられると、流石に恐怖に近い感情すら込み上げてくる。 「どうせなら、もっと遠くに逃げれば良かったのにね──なまえちゃん」 そんなことでは直ぐに捕まってしまうよ。 苦笑とも哀れみともつかない微笑を唇に浮かべたロイドは、懐かしい味のするプリンをまた一口、ぱくりと食べた。 願わくば、逃げた小鳥が幸せでありますように。 |