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「取り込み中だ」

「見れば分かる」

甘やかな褥(しとね)の空気を割って入った侵入者に、ルルーシュが憮然として苦情を申し立てるも、相手は涼しい顔のまま寝台へと歩み寄ってくる。
断続的に与えられる快楽に溺れさせられていたなまえにいたっては、胎奥に届くほど深々と楔を埋め込まれた状態では、逃げられるはずもなく。

「……っ、きつい、な…見られて感じたのか?」

艶やかな吐息を漏らして笑ったルルーシュを潤んだ瞳で睨みつけてやるくらいが精一杯だった。
涙の滲むその目元に優しく唇を落とし、ルルーシュは紫紺の瞳をC.C.へと向けた。
欲に濡れた高貴なアメジストが真っ直ぐに小柄な侵入者を射抜く。

「常々性質(タチ)が悪いとは思っていたが…まさか情事の最中に乱入してくるとはな」

ルルーシュの揶揄にC.C.はムッとした顔をして、不機嫌そのものの声音で言い返した。

「私を責めるのはお門違いだぞ。お前が『暫くの間この部屋に誰も近付けるな』などと、下心丸出しの命令をしたりするから悪い。お前の命令を真剣に受け取ったジェレミアが、気を利かせて完全に人払いをしたせいで、私が来るしかなかったんだ」

誰が好き好んで使い走りをするものか、と不満を露にしたかと思うと、C.C.は一転して意地の悪い笑みを浮かべた。

「しかし、変われば変わるものだな。相変わらず他人の色事には疎いようだが、随分と成長したじゃないか、坊や」

「馬鹿な事を言っていないで、早く用件を言え」

呆れた口調で言うルルーシュに、C.C.は大袈裟に肩を竦めてみせてから、一枚のフロッピーを取り出し、傍らのテーブルに置く。

「スザクからだ。目を通しておけ」

「──スザクから…そうか」

ルルーシュが表情を改めたのを見届けて、C.C.は踵を返した。
シュンと音を立てた扉が、閨(ねや)の空気とともに魔女の身体を外へと吐き出す。

「ルルーシュ…」

「ああ、すまない」

ふっと眼差しをやわらげると、ルルーシュは見上げるなまえに甘い口付けを落として、行為を再開する。
寸暇を惜しむという言葉があるが、今の二人には、この短い蜜月を後悔のないよう過ごすことしか許されていないのだ。
二人に残された時間はあまりにも少ない。

《ゼロ・レクイエム》

その先に待つものは、"魔王ルルーシュ"の死による終止符にほかならない。
そして、その時は刻一刻と迫っていた。



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