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「ねえ、トムはどの寮に入りたい?」

「入る寮は帽子が決めるんだろう」

「うん、そうみたい。でも、この寮に入りたいっていう意思が強ければ、帽子はちゃんと本人の希望を…ええと…そう、"こうりょ"してくれるんだって」

「ふーん」

リドルは教科書を横に置き、興味深そうになまえの話を聞いていた。
その顔からは、あらゆる事を知っておきたい、覚えておきたい、といった知識欲のようなものが窺える。
ホグワーツへ向かう列車の中で教科書を読むくらいだから、きっとトムは真面目な子なんだなとなまえは考えていた。
──もっとも、その考えは直ぐに違っていた事が判明するのだが。

「おいおい、見ろよ、ちっちゃいのが偉そうに個室を独占してるぜ」

突然、ドアが乱暴に開かれたかと思うと、大きな体をした上級生らしい男の子達が個室の中に乱入してきた。
ニキビ面にニヤニヤ笑いを浮かべたリーダー格の少年が、リドルとなまえを交互に見る。

「お前、一年坊主か?もう可愛いガールフレンドなんか作って、生意気な野郎だ」

年長の少年達の輪にドッと意地の悪い笑いが巻き起こる。
なまえは真っ赤になったが、リドルはまるで動じた風もなく冷静な顔で少年を見上げていた。
その様子が気に入らなかったのか、少年は醜い顔を歪めた。

「ん?なんだァ?ビビって声も出ないか?」

「──失せろ」

「あ?」

「失せろと言ったんだ。聞こえ無かったのか?」

抑揚のない冷たい声に、なまえはゾッとしてリドルを見た。
綺麗に整った顔に、寒気がするような冷酷な微笑が浮かんでいる。

「じゃあ、そんな役に立たない耳はいらないな」

リドルがそう言った途端、青白い光がコンパートメントの中で破裂し、辺りに恐ろしい叫び声が響き渡った。

「耳が…!俺の、み、耳が……!!」

恐怖と苦痛が入り混じった呻き声。
左耳を押さえて呻いているのは、さっきのニキビ面の少年だった。
見れば、彼の左耳は完全に凍りついてしまっている。
取り巻きの少年達は皆、杖も使わずに魔法を使ってみせた目の前の一年生を化け物でも見るような目で見つめていた。

「トム…あなたがやったの?」

震えながら尋ねたなまえには目を向けず、微笑を消したリドルは、年長の少年達を一人ずつ順番にしっかりと見据えて、低く威圧感を感じさせる声で言った。

「二度と僕に偉そうな口をきくな。この事を誰かに告げ口したり、復讐しようとしたりすれば、今度は耳を千切り取られるくらいでは済まないと思え」

命令し慣れた口調に気圧されたのか、文句を言う者は誰もいない。
むきになって反撃してくるのではないかと心配していたなまえは、自分と同様に、少年達がぶるぶる震えている事に気がついて、彼らがすっかり怖じけづいてしまっているのだと知った。



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