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「なまえさん…なまえさん、起きて下さい」

聞き覚えのある声に促されて目を開ける。
すると、視界いっぱいに綺麗な顔が映り込んだ。

「安室さん…?」

「ああ良かった。どこかおかしなところはありませんか?」

おかしなところ?
寝起きのぼんやりした頭では安室さんの言葉の意味を理解しきれず内心首を傾げる。

「身体のどこかに違和感があったり、いつもと違う感じはしませんか?」

「えっと…大丈夫だと思います」

安室さんが手を貸してくれたので上半身を起こし、ベッドの上に座った形になる。
そうすると、異変はすぐにわかった。

「えっ、ここどこですか?」

「それは今FBIが調べています」

FBI?と視線を巡らせれば、壁を調べているらしい赤井さんの姿が見えた。

「どうです?」

「駄目だな。特殊な物質で出来ているらしく、びくともしない」

「そうですか」

最初から答えがわかっていたように安室さんが頷く。
私が寝ている間に彼自身も調べていたのかもしれない。

「僕達も目が覚めたらこの部屋にいたんです」

安室さんの話によると、二人とも部屋の別々の場所で目覚めたらしい。
そして室内を調べている最中に鉢合わせしたのだとか。
危うく険悪な空気になりかけたが、ベッドに私がいることに気付いたことで、一時休戦とし、現状を把握するべく赤井さんは室内の調査を続行、安室さんは私が何かされていないかと心配して脈を調べてから私を起こしにかかったということだった。

「なまえさんの無事も確認出来たので、後はこの部屋から出るだけなんですが…」

「どうやらそれは難しそうだぞ」

赤井さんが来て言った。
途端に安室さんの目付きが険しくなる。

「どういう意味ですか?」

「言葉通りだ。実際に自分の目で見てみるといい」

「あなたに言われなくともそうするつもりですよ」

冷たく吐き捨てて安室さんはベッドから離れて行った。
その道のプロである赤井さんと安室さんが調べているのなら、一般人である私に出来ることはない。
とりあえずベッドから降りて部屋を見回してみた。

普通のマンションの寝室よりも明らかに広い。
部屋の中央にはキングサイズのベッドがででんと鎮座しており、そのベッドサイドにはサイドシェルフが置かれていた。
ベッドの正面には大きな液晶テレビ。
壁にはクローゼットと思われるドアがある。
その他にもドアが二つ。

「片方は洗面所、安室くんが出て行ったもう一つのほうはキッチンに繋がっている」

「あ、そうなんですか」

私の視線から考えていることがわかったのか、赤井さんがそう教えてくれる。

それから少しして安室さんが戻って来た。
その険しい表情を見た時から、なんとなく答えはわかってしまっていた。

「外に出るドアがない。窓もだ」


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