洛山の練習は帝光と同じか、それ以上に過酷なものだった。 才能を認められて全国からスポーツ入学で来たはずの部員達が、毎日のように脱落していく。 そうして篩にかけられて残った者だけが、「開闢の帝王・洛山」の名を背負う事が許されるのだ。 「玲央先輩、タオルどうぞ」 「あら、ありがと」 汗を吸ってぐっしょりとなったタオルを受け取り、新しいタオルとドリンクを渡す。 SG(シューティングガード)の実渕玲央。 長距離からのシュートを得意とする彼は、スリー狙いで得点を稼ぐ役割があるのは勿論のこと、PG(ポイントガード)の補佐も務めなければならない。 いわば赤司の右腕となる存在だ。 そう尋ねると、実渕は色っぽい笑みを浮かべて笑った。 「そうよ、私は征ちゃんの女房役なの。ねぇ、征ちゃん?」 「ああ。しっかり役目を果たしてくれ」 バッシュの紐を結び直しながら見もせずに赤司が答える。 同じ遠距離シュートを得意とするプレイヤーでも、緑間とは随分タイプが違う。 もちろん性格は違って当然なのだが、今までの経験上、ポジションやプレイスタイルが同じ者には何かしら共通点がある事が多かったのだ。 やはり彼にも少し神経質な部分があるのだろうかと七海は思った。 女の子には優しく、が信条の彼は七海にとても親切に接してくれる良い先輩だ。 名前で呼んでくれと言われたので今はそうしている。 それが切っ掛けで、他のスタメンの先輩達の事も名前で呼ぶ事になってしまったのだが。 赤司も今では彼らの事を下の名前で呼んでいる。 「うおおおい!もっと肉を食って力出せよ!!」 「うっせーな!この筋力ゴリラ!!」 「おう!サンキュー!」 「だから褒めてねぇよ!!」 レスリングでも出来そうな体格の男が、C(センター)の根武谷永吉。 それに噛みついて文句を言っているのが、SF(スモールフォワード)の葉山小太郎だ。 彼ら三人は“無冠の五将”と呼ばれた天才プレイヤーでもある。 総合的に技術レベルの高い洛山の中でも彼らは群を抜いている。 そんな彼らと共に技術を磨き高め合う者同士、信頼関係が築かれているのを七海は感じていた。 |