「そういえば、小太郎がね、中学のとき帝光のマネを見た事があるっていうから、征ちゃんと一緒にマネが来るって聞いた時に皆最初その子の事だと勘違いしてたのよ」

「桃井さつきちゃんですね」

「そう、その子」

「さつきちゃんは青峰くんと幼なじみで、彼と一緒に桐皇に行きました」

「あら、幼なじみ同士で同じ学校に行くなんて、征ちゃんと七海ちゃんと一緒ね。やっぱりその二人もラブラブなの?」

「いえ、本人達はただの幼なじみだって言ってますし、さつきちゃんは他に好きな男の子がいるんです」

「そうなの?でも何だかちょっと怪しい感じね」

「私もそう思います。もし他の誰かと付き合ったとしても、結局、最後は結婚するんじゃないかなー、なんて」

「やっぱり?」

その時、ホイッスルの音が鳴った。
交替だ。
実渕はタオルをきちんと畳んで置いて立ち上がった。

「じゃ、行ってくるわね」

「はい、頑張って下さい」

七海も記録を書き終えると、その場を離れようとした。

「随分、仲良くなったみたいだね」

幼なじみの声がそれを引きとめる。
体育館の壁を背にして座り、休憩に入った赤司が七海を見上げていた。

「うん、さつきちゃんと青峰くんの話をしてたの」

「幼なじみは結婚するんだって?」

「さつきちゃんと青峰くんの話だよ」

「僕達もその予定だけど」

七海はドリンクとタオルを赤司に押し付けると、走ってその場から超スピードで逃げ出した。
赤くなってしまった顔を見られたくなったからだ。

「あーあ、逃げられちまったか」

「残念だったな、赤司」

根武谷と葉山が口々にはやしたてる。
しかし、当の赤司は淡く微笑んでいた。

「構わない。どうせ僕からは逃げられないんだ。どこに行ったとしても最後には僕の所に戻って来るしかないんだよ」

「…赤司…」

「こえぇよ…」


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