学年が変わっての新学期初日。
気候の関係か、校内に植えられた桜は今年も丁度良いタイミングで満開だった。

桜の木の下を真新しい制服に身を包んだ一年生が歩いていくのを見て、去年は自分もあんな感じだったのかと思いながら七海は昇降口に向かった。

昇降口前の大型掲示板には新しいクラス名簿が張り出されていて、その前に置かれた折り畳み式の長机の上に名簿のコピーが積まれている。
登校した生徒達はそれで自分の新しいクラスを確認して教室へ行くのだ。

「今年も同じクラスだな」

いち速く自分達の名前を見つけた赤司が七海に告げる。
少し遅れて自分の名前を見つけた七海も、うん、と頷いた。

「今年もよろしく、征くん」

「ああ、こちらこそよろしく頼む」

軽く笑いあって新しいクラスまでの道のりを歩きながら、部活について少し話をした。
去年三年生だった先輩達は引退して卒業し、新たに最高学年となった去年の二年生達により、ミーティングが行われたらしい。

「部の、というよりも、同期の、といった意味合いが強いものだったらしいな。今後の体制ややり方について話し合ったようだ」

副主将である赤司には、主将から話があったそうだ。
それを踏まえた上で、今度は赤司やコーチも交えた本格的な話し合いが行われるのだろう。

「大変だね」

「そっちこそ。聞いたよ、マネージャーは二年生が中心になって新入りを教育することになったそうじゃないか」

「そうなの…大丈夫かなぁ」

「大丈夫、お前なら上手くやれるさ」

教室に着くと、そこには新しいクラスメイト達が既に何人かいて話していた。
知っている顔もいれば、知らない顔もいる。

「七瀬!」

名前を呼ばれて振り返ると、青峰が廊下を歩いて来るところだった。
七海の横に赤司を見つけた彼は、おいおいと頬を歪めた。

「お前ら、また同じクラスなのかよ」

「羨ましい?」

「いや、なんでだよ」

すかさず突っ込まれた。

「さつきちゃんは一緒じゃないの?」

「同じクラスになった女子と話してたんで置いて来た。なんで女は数が増えるとキャーキャー話し始めるんだ?」

「新学期だから皆テンション上がってるんだよ。やったー!今年も一緒だね!よろしくー!みたいな、儀式?」

「いや、なんでだよ」

またしても突っ込まれた。
女子の生態が不思議でならないらしい。
そういう青峰は、とあるグラビアアイドルに夢中なのを七海は知っていた。

「新しいクラスにおっぱい大きい子いた?」

「おま、何言って…お前なぁ、女子がおっぱいとか言うなよな!赤司も何とか言えよ!」

「可愛いだろう?」

「…はあ…俺もう行くわ…」

青峰は何だか疲れた様子で去って行った。


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