期末試験の最終日。

赤司と緑間はマネージャーを通して主将からの通達を受け取っていた。
内容は明日からの練習メニューについて。
バスケ部は今日まで休みだったのである。
テストの一週間前からが実施される期間中は部活は出来ない。
勉学にも集中出来るようにと、そういう規則になっているのだ。
明日からはまたハードな練習が再開される事になる。

「あのっ!」

突然、二人の前に一人の女子が駆け寄ってきた。
正確には、彼女が見ているのは赤司のほうだ。

「お、お誕生日おめでとうございます!これ、受け取って下さい!」

女子はさっと頭を下げ、赤司に向かって両手で紙袋を差し出した。

今日はやけに女子に遭遇すると思ったら、そういうことか。
緑間は納得した。
今日は赤司の誕生日だったのだ。

その赤司は、「気持ちだけ有り難く受け取っておくよ」と優しく言って、結局プレゼントは受け取る事はなかった。
その後も目的地に着くまでに数回同じ事態に遭遇した。

「相変わらず凄い人気だな。まともに受け取っていたらリアカーが必要になるのだよ」

「はは、まさか。さすがにそこまでじゃないさ」

「しかし、何故すべて受け取らずに断っているんだ?」

「それなりに値の張る物だった場合は貰いっぱなしというわけにはいかないだろう。そうなると、相手の氏名や貰った品を一々覚えておく必要が生じてくる。悪いが、赤の他人のためにそんな労力を使う気はないね」

まただ、と緑間は思った。
またあの冷酷な目をしている、と。

「それに、誰かのは受け取ったのに、誰かのは受け取らなかった、という事になれば、面倒な事態になるのは目に見えている。だから受け取らない。それだけのことさ」

「なるほどな…」

緑間は眼鏡を指で直しながら頷いた。
確かに女子にはそういう面倒な習性があるようだ。
緑間自身ではないが、バレンタインの時に知り合いが似たような問題に巻き込まれたのを見た事がある。
Aの女子のは受け取ったのにBの女子のは断ったとか何とかで、女同士の抗争が起きたのだ。
全く面倒な生き物だ、とつくづく思う。

これだから同年代の女子には興味がわかないのだ。
もしも自分が誰かと恋愛関係になるのならば、もっと成熟してしっかりした考えを持つ年上の女性がいい。

「年上は年上で問題がないわけではないと思うが」

「!何故わかったのだよ!?」

「顔に出ているよ」

だから一度も将棋で赤司に勝てないのだと言われたようで、緑間はぐぐっと喉を詰まらせた。


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